本心はどこにあるのか。自分なりの答えを探る。自由死、安楽死

こちらの本を読みました。(オーディオブックで読了)

平野 啓一郎(著)、井上 悟(ナレーター)

【Audible/オーディブル】 聴く本

(* 聴き書きのため、引用として記載した文字が底本/原本と若干異なるかもしれません。ご了承ください)


概要

『マチネの終わりに』『ある男』と、ヒットを連発する平野啓一郎の最新作。
舞台は、「自由死」が合法化された近未来の日本。最新技術を使い、生前そっくりの母を再生させた息子は、「自由死」を望んだ母の、<本心>を探ろうとする。
母の友人だった女性、かつて交際関係にあった老作家…。それらの人たちから語られる、まったく知らなかった母のもう一つの顔。
さらには、母が自分に隠していた衝撃の事実を知る――。
ミステリー的な手法を使いながらも、「死の自己決定」「貧困」「社会の分断」といった、現代人がこれから直面する課題を浮き彫りにし、愛と幸福の真実を問いかける平野文学の到達点。
(Amazon商品説明より)

中年期の自身がこのまま生き続ければ、いずれは高齢者になります。

そう遠くない未来に、実際に体験するであろう社会の在り方が、リアルに感じられる作品でした。

近未来の格差・差別社会
低賃金の労働
疲弊した生活
監視社会
VR(バーチャル リアリティ/仮想現実)世界で生きること
生きること死ぬことの選択
自由死(安楽死、尊厳死)
、、等々


「もう、十分」の本意はどこにあるのか

「もう、十分。」

主人公(さくや・朔也)の母は、「自由死」を望んでいました。

作中で何度も語られる「もう、じゅうぶん」という言葉が、いつまでも印象に残ります。


もしも「自由死」という選択肢があったなら

印象深かった理由としては、「もう、十分」という言葉の裏に、さまざまな解釈ができるからです。

・ それなりに幸せに生きられたと思うから。

・ 自分の人生を生き切ったから。

・ 思い残すこともそれほどないから。

・ 生きることに疲れ切ったから。

・ なぜ生き続けなければいけないのかわからないから。

・ 今の社会に生きる希望を見い出せないから。

・ 仕事、健康、お金など、全てに問題を抱え、改善も困難だから。

他にも色々あると思います。


現時点では、身体的苦痛や病状などの明確な事由により、一部の国や地域では安楽死が認められているケースもあります。

もし、そうした限定的なものでなく、世界中の誰もが死に方を選べる(自由死を選択できる)未来がやってきたとしたら…

(生活環境や年齢、思想や価値観などによって、考えが変わっていくことはあるとしても)今の自分なら、選択肢があるのなら、どうしたいと思うのだろうと。

時間をかけて、一度は各個人が真剣に向き合うべき問題だと感じます。


【考え方】自由死について

自由死というものについて。

作中の登場人物たちから発せられた言葉の中で、印象に残ったいくつかの考え方を簡単にまとめてみます。

・ 好き好んで自由死をする人などいない。

・ もし、いったん自由死を認めてしまえば、弱い立場の人たちへのプレッシャーになる。

・ それは、優生思想なのでは。

・ 誰だって命は惜しいはず。それは、この社会が絶対否定してはいけない前提。

・ 国が財政難だからと言って、貧しい人は足ることを知り、自由死を受け入れるべきなのか。

・ 役に立つかどうか、お金を持っているかどうかで、命の選別をしてはいけない。

・ 人間には、ただ自然死があるだけだ。

・ 追い詰められやむを得ず自由死を願うのではなく、自らの死を納得して受け入れる場合もあるのでは。

・ どんなに医学や社会保障が整備されても、やはり最後は自分の考えで自由死したい人はいる。

・ 昔の日本とは違う。夢物語のような前提は難しい。

・ 衰退して、どこを見ても年寄りだらけ。誰も、もう安心して人生をまっとうできるとは思っていない。

・ 世界を変えていく力のある人もいれば、無力な人もいる。


自然死、自由死、いずれにも数えきれないほどの問いと、多くの葛藤があるものだと思います。

変えようのない現実、解決しようのないたくさんの問題は常にある中で、自身はどう生きて、どんなふうに終わりたいと思うでしょうか。

(もしも、悪用・強制・無言の圧力もなく、善・理性・法律・個々の価値観に基づいた、平和的な自由死というものの選択が可能だとしたら。

個人的には、今をもっと、安心して生きられるのかなと考えたりします)


***

「もう、十分」

という言葉は、シンプルなゆえに、その裏にある感情や思考を思わずにはいられません。

安楽死、尊厳死、自由死。

安易に白黒つけられない問題だからこそ、その是非を問うだけでなく、自分の意思を時間をかけて探っていくことが必要だと、あらためて思います。

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