こちらの本を読みました。
森見 登美彦(著)
概要
私はなるべく彼女の目にとまるよう心がけてきた。吉田神社で、出町柳駅で、百万遍交差点で、銀閣寺で、哲学の道で、「偶然の」出逢いは頻発した。我ながらあからさまに怪しいのである。そんなにあらゆる街角に、俺が立っているはずがない。「ま、たまたま通りかかったもんだから」という台詞を喉から血が出るほど繰り返す私に、彼女は天真爛漫な笑みをもって応え続けた。「あ!先輩、奇遇ですねえ!」…「黒髪の乙女」に片想いしてしまった「先輩」。二人を待ち受けるのは、奇々怪々なる面々が起こす珍事件の数々、そして運命の大転回だった。天然キャラ女子に萌える男子の純情!キュートで奇抜な恋愛小説in京都。
(「BOOK」データベースより)
京都を舞台に、現実と異世界が混ざり合った、不思議な世界観の物語です。
地に足をつけない
作品の中で、なぜか印象に残ったのが、このセリフです。
「地に足をつけずに生きることだ。それなら飛べる」
周囲を気にしない
このシーンが心地よく感じられたのは、こんな発言をする樋口氏という登場人物の言動に、なんだか風のような心が軽くなるものを感じたからです。
周囲を気にしない、まさに天狗のような飄々とした雰囲気。
(つかみどころがなく、あらゆる難事もするっとかわしていくような)
地に足をつけて生きる。 現実の世の中では、そんな生き方のほうが、褒められたり認められたりしやすいのは周知のことだけれど。
(小説の中とはいえ)地に足をつけない生き方も、どこか心惹かれるものがあり、素敵だなと。
物語の主人公と同世代(二十歳前後、学生)の人にはもちろん、すっかりくたびれた大人たちにも、空想・妄想の楽しさを思い出させてくれるような。
ちょっと現実逃避しつつも、ほんわかした気持ちとファンタジーに浸れる1冊です。
好きな場面
樋口氏が、主人公に飛び方を教えるシーン。
学生天狗樋口氏の教えは、これ以上ないぐらい曖昧であった。
(中略)
「地に足をつけずに生きることだ。それなら飛べる」
まったく馬鹿にしていると思いながら、「ある日 実家の裏山を掘っていたら石油が出て大儲け、億万長者となって大学中退、以後 死ぬまで楽しく暮らす」と地に足をつけない将来のビジョンを思い描いてみたところ、身体はみるみる軽くなり、ふわりと物干し台から浮かび上がっていた。
地に足をつけた生活をしようとして、なぜかうまくいかなかったり、息苦しさを感じるとき。
地に足をつけない生き方、という選択肢もありなのかも? などと、ちょっと無責任に想像してみると、なんだか肩の力も抜けそうです。
***
妄想たくましい男子大学生が黒髪の乙女に片思いし、数々の珍事件を巻き起こしていくのがお話の柱。個性の強い登場人物たちは、皆どこか愛嬌があり微笑ましいです。
誰もがよいことばかりではない人生という現実の中で、ほんの少しでも心を軽くするような、風がふっと通っていくような。
そんな場面をたくさん見つけながら、物語を読みすすめていくのも、なかなか楽しいものです。
【森見 登美彦】著者ページ・作品を見る Amazon☆読後の余談
作中にたびたび登場する「偽電気ブラン/ニセデンキブラン」なるお酒。架空の飲み物かと思っていましたが。ふと気になってネットで調べたところ、「電気ブラン」というお酒が実際にあったとは。知らなかったです。。
(森見作品には、この偽電気ブランがよく登場するようです)
電気ブランは、明治時代に東京・浅草の神谷バーから誕生したカクテル(アルコール飲料)だそうで、なんだかとても美味しそう。(楽しみ方も色々。ストレート、ロック、ハイボール・・)
本書を読みながら電気ブランを飲んだら、さらに物語に入り込めるかも。
(小説に出てくる食べ物や飲み物って、不思議と試してみたい気分になりますね)







